形態統御機構研究グループ
- 准教授 :
- 相田 光宏
- E-mail :
- m-aida@bs.naist.jp
研究・教育の概要
種子から発芽したばかりの幼植物と成熟した植物体では、その大きさも器官の数も大きく異なります(図1)。植物体の地上部の成長は、茎の先端部にある分裂組織(茎頂メリステム)が常に新しい細胞を作り続けることで進んでいきます。メリステムの細胞は盛んに分裂を行い、葉・茎・花器官などのさまざま器官を構成する細胞を生み出します(図1)。そこでは、未分化なまま増殖する幹細胞を保持しながら、様々な性質へと分化する細胞を供給するための巧妙なしくみが働いているのです。私たちは、メリステムがどのようにして形成されるのか、またメリステムからどのようなしくみで器官が形成されるかといった問題を、分子レベルで明らかにすることを目指しています。
主な研究テーマ
- メリステム形成のメカニズム
- 茎頂のメリステムは、胚発生の時期に子葉の間に形成されます(図2)。つまり、この時期に植物の地上部全体のおおもととなる大事な組織が確立されるのです。これまでに私たちは、シロイヌナズナの3つの遺伝子CUC1・CUC2・CUC3がメリステム形成の鍵となる重要な因子であることを見いだしました。これらの遺伝子はいずれも転写因子をコードしており、メリステムが働くために必要な様々な遺伝子の発現を制御していると考えられます。現在CUC遺伝子の働きを詳しく調べることで、メリステム形成のしくみを明らかにしようとしています。
- 花の形成メカニズム
- 種数で言えば陸上植物全体の9割は被子植物、つまり花を咲かせる植物です。その成功の理由の1つは、複雑な構造をした花にあると考えられています。花はがく片、花弁、雄しべ、雌しべの4種類の器官からなり、いずれも次世代の植物(種子)を残すと言う目的のために特殊化した器官です。花を咲かせて実を付けるには大きなエネルギーを必要とするため、植物は成長する間、常に日長や温度などの様々な情報を感じ取り、それらの情報を集積することで適切なタイミングで花をつけるよう調節しています。私たちは植物の器官形成の集大成ともいえる花の形成に着目し、花をつくるメリステムの性質がどのような仕組みで決定されるのかを研究しています。また、花器官のうち、特に次世代の種子形成に重要な生殖器官である雌しべの形成メカニズムに関する研究も行っています。
主な発表論文・著作
- Takeda, S. et al., Plant J doi: 10.1111/j. 1365-313X.2011.04571.x., 2011. [PubMed]
- Takeda, S. & Aida, M., J Plant Res 124, 211-219, 2011. [PubMed]
- Takano, S. et al., Plant Cell Physiol 51, 621-634, 2010. [PubMed][Cover photo]
- Karim, M. et al., Plant Cell, 21, 1360-1372, 2009. [PubMed][See also] [And also]
- Aida, M. & Tasaka, M., Curr Opin Plant Biol, 9, 72-77, 2006. [PubMed]
- Aida, M. & Tasaka, M., Plant Mol Biol, 60, 915-928, 2006. [PubMed]
- 相田光宏, 蛋白質 核酸 酵素, 50, 410-419, 2005. [Link]
- Furutani, M. et al., Development, 131, 5021-5030, 2004.[PubMed][Cover photo]
- Aida, M. et al., Cell, 119, 109-120, 2004. [PubMed]
- Aida, M. et al., Development, 129, 3965-3974, 2002. [PubMed]
- Aida, M. et al., Development, 126, 1563-1570, 1999. [PubMed]
- Aida, M. et al., Plant Cell, 9, 841-857, 1997. [PubMed]